「紛争や国境さえも越えられる映画を」
内田:
監督、はじめまして! 今回は「表現と水」というテーマで、お話をして頂きたいのですが、まずは「食」について伺っても良いでしょうか? というのも、監督の作品を振り返ると『春色のスープ』『ラーメン侍』『カラアゲ☆USA』など、お腹がすいてくる映画ばかり(笑)! フードライターの私としては、なぜそこまで「食」を掘り下げるのか、ぜひとも知りたいところです。
瀬木:
政治、宗教、民族、言語といったすべての違いを越えて、世界中の人に伝わるのが「食」だからです。食べるという行為は、生きとし生ける者にとって、もっとも身近なこと。僕が福岡県の久留米市で7年前に撮影した『ラーメン侍』という映画は、これまでに43ヵ国で上映されています。そして今も上映され続けているんです。ラーメンブームということもあるでしょうけれど、食って古今東西、老若男女を問わず、あらゆる人にとって「一大事」なんだろうと思うんですよ。
しかも意外なことに、豚骨ラーメンの話なのに、イスラム圏での上映が多いんです。
内田:
え? イスラム教徒は、豚を食べるのを禁じられているのに?
瀬木:
ハラル認証(イスラム教の戒律にのっとり、調理、製造された商品であることを示すマーク)されたラーメンもあり、日本人が思う以上に、イスラム圏の人々にとって、ラーメンは馴染み深いものなんでしょうね。
スゴイなと思ったのは、きしくも『ラーメン侍』がイスラエルのテルアビムと、イランのイスファハンで同日に上映されたことです。映画というメディア、そして食という題材は、紛争や国境さえも越えて、縦横無尽に広がっていく。この仕事をしてきて良かったな、と思えた出来事でした。
内田:
湾岸戦争直後に私、テルアビブにしばらく住んでいたことがあるんです。当時は、一瞬の和平ムードに沸いた時期で、それが幻だったかのように、現在では中東は混迷を深める一方です。そんな中、同じラーメンの映画を、対立する者同士でも同じタイミングで楽しんでいる。ボーダーレスに喜びや悲しみを共有、共感できるメディアなんですね。映画って。
瀬木:
僕はオールロケ、オリジナルの物語での映画づくりを続けているので、まずは作品の舞台となる地方の方々との出会い、そして共感から、製作はスタートするんです。そこに喜びを感じられるからこそ、映画の仕事を続けられるし、ストーリーも生まれてくるんだと思っています。
映画って、もっとも製作に携わる人数の多い芸術。例えば、お祭りのシーンがひとつあれば、エキストラとして映画に関わる人の数は、1万人くらいにのぼることもあるんです。製作プロセスからして、じつにたくさんの人と、思いや時間を分かち合っているんですよ。一方で、完成すれば非常に身軽なのが映画。フィルムさえあれば、どこででも上映でき、無数のお客さんに観てもらうことができます。
内田:
最初に影響を受けた映画は?
瀬木:
僕の出身地である三重県四日市市が舞台となった『ゴジラ』ですね。いま自分がオールロケで撮影するのは、あの頃の映画体験があるからかも知れません。近代文明の悪しき象徴みたいにして、四日市の石油コンビナートが、ゴジラに攻撃されるわけですけれども、そんな公害の町で育った体験が、僕の自然観を育んだとも考えられます。
「水は時代のキーワード」
内田:
海や湖の映像が印象的な『千年火』や『マザーレイク』といった作品から、監督の自然への憧憬が感じられます。
瀬木:
僕の映画を分析的にみると「火」「風」「水」という、三つの要素が入っていることが多いんです。意識しているわけではないのですが、とくに「水」はだいたいどの作品にも出てきます。時に暴れ狂い、世の中を破壊する水だったり、時に清らかに流れ、人の醜さを洗い流す水だったり、時に汚染され、それでもただただ耐え忍ぶ、母のような水だったり、時に滝のように、人間の弱さを叱咤激励する水だったり・・・。現代を「水の時代」という人もいらっしゃいますが、たしかに「水」は今、世界のキーワードのような気がします。
内田:
それはポジティブなんですか? あるいはネガティブなんですか?
瀬木:
両方でしょうね。
内田:
飲み水に関しては、なにか意識なさっていることはありますか?
瀬木:
10年ほど前までは、飲む水をわざわざ買うなんてこと、なかったんですけどね、ここ数年は市販の水を買っています。身体の60%は水分だと知ったら、良質な水で体内を満たしたいという意識は、おのずと高まりますよね。
内田:
撮影現場ではどうですか? 俳優やスタッフはどんなお水を飲んでいらっしゃいますか?
瀬木:
ほとんどの役者は、水への意識が高いですね。いつも手元に水を用意して、水分補給は欠かしませんよ。で、みんなに『エネワンウォーター』を現場で配ると、圧倒的に「おいしい!」「おいしい!」という反応が返ってきます。フードライターだったら「おいしい」って言葉はあまりに安易で、使っちゃいけないかも知れないけれど、おいしいものを口にしたら、反射的に「おいしい!」って言葉しか出てこないですよね(笑)。
内田:
そこをあえて、『エネワンウォーター』をほかの言葉で表すなら、角がとれて身体にスーッと入っていくような「まぁるい水」とでも言うのでしょうか。
瀬木:
細胞に水が浸みこんでいくような、細胞が喜ぶような、そんな感覚が強くあります。超軟水が日本人に合うんですかね。ほかの水にはない感覚です。